#LUNGS レポ・感想※ネタバレ注意※

ジャニーズWEST神山智洋さん主演、「LUNGS」の大阪公演を観劇してきた。

「LUNGS(ラングス)」公式サイト|神山智洋(ジャニーズWEST)主演

 

12月には東京公演が待っているが、ご縁があり2回、大阪公演に足を運ぶことができた。

観劇して感じたことや考えたことを書き殴ることしかできないけど、一オタクとして遺しておく。個人的初回である11月6日の夜公演の記憶を遺しておく。

 

何度も言うと思うが、神山くんと奥村さんの「LUNGS」はまだ東京公演があり、終演したわけではない。まっさらな状態で東京公演に入りたい方は読まないでほしい。

 

 

そもそも「LUNGS」とは

英国の劇作家ダンカン・マクミランが2011年に発表した戯曲。

2011年の初演以降世界中で上演され続け<現代戯曲の最高傑作>との呼び声も高い。

「そろそろ子供を持つべきか?」という問いに直面した若いカップルによるスピーディーな会話で進行される二人劇。

男女に役名はなく、戯曲のなかでは女はW、男はMであらわされる。

お互いに名前を呼びあうこともない。

 

 

「この作品は、素舞台で上演されることを想定している。
背景も、家具類も、小道具も一切なく、マイムもしない。衣裳替えもしない。
照明変化や音響で、時間や場所の移動を示すことも行わない。」

ー戯曲ト書より

 

 

 

やばい。何その戯曲。内容も条件も私が知っている舞台じゃない。しかもキャストは男女のカップルを演じる2人のみ。

自担もしかしてものすごい挑戦をしようとしてるんじゃないの…!?

 

公式に神山くん(以下神ちゃん)が主演に抜擢されたと発表されたときの気持ちをいまだに覚えている。自担のこんな経験に立ち会えるならぜひとも観劇したい。チケットの抽選が始まる前から(当たるかわからないのに)観劇するために心の準備をしていた。

 

 

前置き

私は可能であるならば、内容を軽く知ってから作品に触れたい人である。そのため、いろんな報道の記事や英国版の内容を書いてくださっているブログを拝見してから観に行った。神ちゃんがLUNGSについて取材を受けている雑誌は購入して内容を熟読した。

それから、私は女性で、(今のところは)シスヘテロで、未婚で、パートナーはいない。学校や仕事は子どもにかかわる道を選んできていて、子育てはしたいけれども結婚に関してはまだあまりわからない。ぼんやりと「いつかは結婚したいなー」とは思っている。

 

※再三書いておくが、これから内容にガッツリ触れるし、セリフや表情、動き(うろ覚え)についても書いたりする。「LUNGS」の内容を知りたくない方や他人の考えを見たくない方は読まないでほしい。

 

 

ステージについて

よくある劇場の舞台じゃなく、あんまりにも陳腐な言葉で表現するなら、かぐや姫が出てきそうな竹筒(コンクリート製)、みたいな。

座席についてステージを見たとき、え、ここでやるの?円形舞台やん、てか後ろのほうの座席のはずなのに舞台との距離ちっっっか!!って思った。

 

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舞台にお二人が立っている図(イメージ)

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Mが縁に座っている図(イメージ)




 

ウォーミングアップ、はじまり

上演時間の少し前、スモークが焚かれ、その時点でワクワクした。舞台や演劇のイメージは暗転してからスタートって感じだったけど、LUNGSは違った。あんまりにもナチュラルに神ちゃんと奥村さん(以下佳恵さん)が登場してきた。神ちゃんは私がライブやバラエティでよく見るあの笑顔だった。あんまりにも神ちゃん過ぎた。

お二人で客席に向かってお手振りしながらステージを歩き回り、手首足首のストレッチやお互いの呼吸を確認しリラックスするような動き。

 

お互いに向かい合い、視線を合わせ、深呼吸。

 

一言発したその瞬間そこにいたのは、MとWだった。

 

目には見えないし、音として認識してないけれど、一瞬でLUNGSが始まり、私はMとWに釘付けになった。

 

 

最初のシーンはIKEAから始まる。なんとも現代的というか。カップルってIKEAデートとかしてそうだよね、これは偏見入ってるけど。あと子ども連れの家族も多いし。

IKEAの店内でMが突然Wに対して、「子どもを持つこと」を提案する。

その一言にWが動揺したのか怒れたのかちょっとした口論が始まり、車の中でも続く。Wは懸命に自分の意見をMに伝えようとするも、今そう言ったけどそうじゃなくて、でもこうでこうで…とまとまらない。

 

序盤のIKEAから車内に続くシーンは、演劇とかに不慣れな私には鬼速いテンポだった。事前にTwitterでタグ検索してたけど、これは集中しなきゃ置いてかれるって即座に思った。

 

 

「話し合う」ということ

100分の中でMとWは常に「話し合う」ことを意識していたし、相手に求めていた。

 

けれど2人はしばしば「話し合う」というよりも「意見をぶつける」「自分の考えを主張する」ことが多かった印象がある。

 

Wは妊娠することについて話しているとき、Mに対して反論しないで、意見をぶつけてこないで、ただ聞いていて、と求めていたし、Mが意見を発する度に理解できないような、本当に言ってる?みたいなリアクションしてた。MはWと話し合おうとしているのに、反論されたりそういうの求めていない、みたいな態度とられたりしてどんどん悲しそうな嫌そうなしんどそうな表情になっていく。Wに寄り添いたいんだけれども上手く立ち回れない、そんなもどかしい表情は見ているこちらもとても苦しかった。集中しながらも頭のどこかで、これは「話し合う」という行為なのか?言葉の殴り合いではないか?とも思ったり。

 

でも正直、あー、女性ってただただ自分の思ってることを吐き出したい時あるよなー。別に意見なんて欲しくないから、黙って聞いていてほしいって思うよなー。むしろ一通り喋った後、意見や解決策を提案されるよりも「そうだね」って対応してほしいなー。って感じたり。きっと私が女性だから今までにそんな考えを持つ人を多く見てきているのであって、男性側はまた全然違う考え方を持っているんだと思う。

 

 

そんな中でも、理想の親・理想の子育てについて話している時間は、MとWの間に穏やかな時間が流れていて、純粋にお互いを愛し合っている2人だった。

Mがポツリとこぼした「僕たち、ちゃんと話し合えてる」って言葉がなんとも愛おしく感じた。

ふとした何でもないこんなシーンで、思わず泣きそうになった。

 

 

妊娠・出産・子育ての考え方の違い

Wは、子どものころから漠然と将来は結婚して出産して子育てをすると思っていた、と話す。

わかる。小さいころからアニメやドラマでは当然のごとく男性と恋愛して結婚、妊娠、出産をする描写に触れてきたし、生物学的にも当たり前な部分もあるからね(丸投げ)。

 

けれどそんな幼少期の考えとは違い、Wは子を自分の身体に宿すことや、身体が変化していくことを「怖い」と感じる。

もしMとのトライ(=セックス)が成功して妊娠したとしても、生まれた子に障害があったらどうしよう、その子を愛せなかったらどうしようとifをたくさん悩む。

だからこそWはMとのトライに挑むけれどもやっぱり怖いと断る。

 

一方でMは初めから子どもを欲しがるし、自分たちは良い親になれるよとWに訴えかける。

 

このあたりの考え方としてはどうしてもWに共感せざるを得ない。それはやはり私も妊娠・出産をこれからする立場であり、自分の身体が変化する立場だからだろう。女性側はライフステージの中で「子どもをもつ」と言ってもつわりがあり、出産するにしても自然分娩でも帝王切開でも痛みを伴う。仕事を休む/辞めることを考えなければならないし、その間は働きたくても働けないし、社会に出て活躍したい人なら社会から切り離されていると感じるかもしれない。

 

 

また、WがMとのトライに恐怖を感じ断る理由の中の別の理由として、行為中のMの目が怖いとも言う。

Mは真剣にWに向き合っているのに最中の目つきが怖いなんて言われたから激怒する。

 

”トライする”の一言でも女性と男性で考える先が違うんじゃないかなーなんて思ったり。女性は「もしトライして成功したら?」とその先まで考える人が多いんじゃないかな。男性側の意見は私には細かくわからないけど、Mは『その瞬間、今だけを考えてる』みたいなこと言ってたし。

 

 

観劇して

お客さんが10人いれば10通りの想像の仕方や答えでいいというスタンスなんです。観終わったら絶対に皆さん、何か考えると思う。そういう、問題提起ができる作品だと思いました。

―雑誌act guide

 

まさにそう。ほんとそう。性別やライフステージ、家族構成に過去の恋愛遍歴、観客の誰もがそれぞれの人生の歩き方をしているから、WにもMにも共感したり何で?って思う部分はそれぞれあると思う。

私は観劇してから、無意識だけど感じていたことや忘れかけていたしんどいことを思い出したけれど、今後起こりうるであろうライフステージの出来事に対して改めて考え直すいい機会だったと思った。

 

東京公演も観劇することができる。きっと大阪公演とはまた違った気持ちを見つけることができるだろう。